ただ座っているだけの卒業式も終わり、私は短いホームルームの後、せっかく午前で学校も終わりだからカラオケにでも行こうよ!!とテンションの高いクラスメートを見送り、席に座ったまま、何度経験しても実感の湧かない別れの季節というものをそこはかとなく感じていた。
挨拶したい先輩は何人かいたけど、今ごろ家族や同級生と写真でも撮ってるんだろうなーと思い、先輩の教室までわざわざ会いには行かなかった。
今日は部活動もなく、校庭では3年生らしい生徒が何人かで集まって写真を撮ったりしている。
校庭の桜はまだ六分咲きといったところで、卒業式の雰囲気を盛り上げるには少し物足りない気もする。
そろそろ人の波も落ち着いたかなとゆっくりと席を立ち、何も入っていない鞄を持って教室を出る。
昇降口について下駄箱を開けると、ピンクの封筒が入っていた。
裏返して差出人を見ると、仲良くしてくれた男の先輩の名前があった。
今どきLINEがあるのに、先輩もまどろっこしいことをするなーと思いながら、封筒を開けると、中には桜色の紙が1枚入っていた。
普通の手紙だと思っていたから、パズルが入っていたことに少し驚いたが、先輩とは何度か部活のみんなとや2人で脱出ゲームに行ったこともあるし、まぁ先輩ならあり得るな、と思った。
裏に書いてあった「14時まで待ってる。」という少し読みにくい字はまさに先輩が書いた字だ。
私は先輩の最後のわがままに付き合ってあげることにした。
3文字ずつ読むと『つくえのなか』になるね。
教室に行き、自分の机の中を見てみると、下駄箱に入っていたものと同じ封筒が入っていた。
封筒の中を見てみると、6枚の問題用紙と薄い解答用紙があった。
解答用紙の番号がぐちゃぐちゃになってるから注意して…っと。
解答欄を埋めて枠の部分を読むと『たいいくかん』か…。
卒業式の片づけも既に終わり、体育館には誰もいない。
体育館の周りをぐるっと周って何かないか探すと、あまり使われていないドアの横に1枚の紙が貼ってあった。
解答用紙を裏返してみたけど、当然ただの白紙だ…。
どうしたらいいんだろう…?
そうか!! 解答用紙を裏返して透かすと左右が逆になるから、枠の部分に入る文字が変化して、ⅣとⅥが入れ替わるんだ!!
だから、解答欄を埋め直して枠の部分を読むと…「さくらのした」?
校庭の桜の木の下に来たけど、先輩の姿はない。
ここだと思ったんだけど、違うのかな…。
一本一本見ていくと、ある枝に紙が折って結びつけてあるのを見つけた。
あと一歩?何が足りないのだろう…。
「さくらのした」だから、初めの謎にあった桜の木の下のマスを読むと『うらもん』…!!
裏門には、見慣れた先輩の姿があった。
「良く間に合ったね、さすが。」
「どうもです。」
「先輩、ご卒業おめでとうございます。」
「うん、ありがとう。卒業はするけど、これからも色んなところに一緒に遊びに行きたいと思ってる。」
「そうですねー、誘っていただいたときはなるべく行こうと思います。」
「それでなんだけど、えーと…。」
「はい、何でしょう?」
「いや、ちょっと待ってね…。」
なんだか今日の先輩は歯切れが悪い。
少しの間流れる静かな空気。
先輩がやっと口を開いた。
「…あの、好きです!!付き合ってください!!」
突然の告白に戸惑ったが、とりあえず気になったことを聞くことにした。
「私のどこが好きなんですか?」
「笑ってるときの顔とか、楽しそうにしてるところを見てると、もっと一緒にいたいなーって思って…。」
先輩は目を合わせずに答える。普段からは考えられないくらい先輩の顔が赤くなっているのが分かる。
「えへへ、良いですよ、よろしくお願いします。」
にやけそうになるのがばれないよう、そう言って私は先輩に抱きついた。
Fin.
おめでとうございます!!
無事、先輩の謎を解ききりました!!
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